週刊isologue(第148号)創業メンバーの中途退任時に株を返してもらう方法

以前、「お笑い」で考える「仲間との起業」という記事をYomiuri Onlineに書きました。

日本では、起業をする際に「友人数人といっしょに起業する」というより「1人で起業する」というパターンが多い気がします。

「ソニー」など、昔から友人数人で起業する例も、もちろんありますが、「共同創業」というよりは「一人の傑出したリーダーがいる」というパターンが多い気がします。資本政策的にも、初期には創業者が100%近く持っているということが多いんじゃないでしょうか。

これに対してアメリカで大成功している企業を考えてみると、友人同士でいっしょに起業しているケースが多いですね。

例えば、アップルはスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック。ヤフーはジェリー・ヤンとデビッド・ファイロ。グーグルはラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン。フェイスブックはマーク・ザッカーバーグの他数人のハーバードの仲間達、といった具合に。

Y Combinatorのポール・グレアム(Paul Graham)氏も、「我々が起業家に何を求めるか(What We Look for in Founders)」という記事の中で、「友情」を起業の重要な要素として掲げています。

経験的に言うと、たった一人で事業を始めるのは厳しい。ほとんどの大成功したベンチャー企業は、2人とか3人の起業家によって創業されている。そしてこの創業者たちの絆は強くなければならない。創業者たちは、お互いに相手のことが本当に好きで、いっしょによく働かないといけない。

ここで注意する必要があるのが、資本政策です。

拙著「起業のファイナンス」では、「ケンカ別れ」という項で、以下のような例を挙げました。

仲間数人で起業することになったとします。
たとえば2人で起業した場合に、社長が6割の株式を、副社長が4割の株式を持ったとします。
ところが副社長が突然、「やっぱりおれ辞める」と言い出したとしたら、安定株主と思っていた4割は一気に不安定になってしまうわけです。
もちろん辞めても良好な関係が続くこともありますが、「ケンカ別れ」ということもよくあります。株価が上昇していたら、買い取るにも億単位の資金が必要かもしれません。
このため、株主構成を考える場合には、それぞれの株主について「この株主が敵に回った場合でも大丈夫か?」ということをよく考える必要があるでしょう。

こうした状況を乗り切るため、「共同創業者(co-founder)が途中で辞めた場合には、全部又は一部の株式を返してもらう」ということを、会社を始める際に決めておいた方がいいんじゃないか?、というのが今回のテーマです。

今までの日本では、ベンチャーの創業時から弁護士などの専門家やベンチャーキャピタルが入るということは少なかったこともあり、共同創業者がそれぞれそこそこの株式を持つというケースについての考察はほとんど行われて来なかったんではないかと思いますが、エンジェルやインキュベータによる投資が活発化しつつある昨今、こうしたことについて最初からきちんと考えておく例も、今後は増えて行くと思います。


今週の目次とキーワード

資本政策上の問題
インキュベーターにはどのくらいの株式を渡せばいいか?
共同創業者には、どのくらいの株式を渡せばいいか?
Googleの創業者のケース
契約の例(日本版Restricted Stock Purchase Agreement)
リバース・ベスティング(reverse vesting)
意外に怖い、返還時の税務
「個人→個人」の譲渡のケース
「個人→法人」の譲渡のケース
会社法上の問題
会社が低額で取得した自己株式の計上額はいくら?
「株+契約」で一体とみなせないか?
種類株式とした場合

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