フェムトマガジン(元isologue)(第640号) 上場前後の資本政策(2021年6月その5+「家康とCEOのお仕事」)

今週も、2021年6月に上場した会社の資本政策を見てみますが、その前に雑談を。

■家康とCEOのお仕事

私、城ガールではないのですが(そもそもガールではないですが)、先日、日本に25あるSTARBUCKS Regional Landmark Storesの一つ、浜松城公園店に立ち寄ったら、公園内に浜松城の天守閣(鉄筋コンクリート製)が存在することに気付いて、ちょっと見てまいりました。

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日頃から、「一般的な『社長』のお仕事と、スタートアップの『CEO』の仕事の違いが、なかなかよく理解されていないよなあ」という問題意識を持っていたのですが、浜松城を眺めて徳川家康のことを考えているうちに、「こういう説明をしたら、わかりやすいかな」という、インスピレーションを得ました。

つまり:

戦国時代の終わり、16世紀の日本で、武将のみなさんに「あなたの仕事って何?」と聞いたとしたら、「武士なんだから当然だろ」という感じで、「武術の鍛錬」とか「戦(いくさ)」だ、と答える人が多かったかもしれないですね。「信長の野望」をやってる研究熱心な武将なら、「治水」とか「開墾」も含めたかもしれません。
このあたりが、一般に「社長の仕事」と思われてる、マーケティング(どうやって売るか)やプロダクトの開発、資金繰りなどに相当するかと思います。

これに対して、ご案内のとおり、家康がやったことは、利根川を東京湾ではなく銚子から海に注ぐようにする大規模な河川改修や、上水を引いて多数の人口を養えるようにしるといった土木系のことはもちろん、天下普請・参勤交代を諸大名の義務とし、財政的な負担を負わせるとともに、大名の妻子を江戸屋敷に住まわせて、江戸幕府に反抗する財政力やインセンティブを削ぐ、といったことを行ったわけです。

つまり、「何百年続くような安定的な社会構造は、どうやったら作れるのか?」ということを考えていたんじゃないかと思います。私は、そうしたことが「スタートアップCEOのお仕事」に対応すると考えます。

もう一つ、多分、家康は、(当然、土木等の知識にも詳しかったと思いますが)これらのプロジェクトを全部自分で指揮するといったことではなく、そうしたことに詳しい人材、それができそうなポテンシャルがある人材を、いかにひきこむか、ということを考えていたんじゃないかと想像します。

もし、現代の経営者がタイムスリップして、家康が現場の細かいことまで全部自分でやってるのを見たとしたら、
「あなたは天下統一して江戸幕府の初代将軍になる人なんだから、自分で図面引いてないで、日本一土木ができるヤツを連れてこいよ」
とツッコミを入れたくなるはずです。
しかし、これが「会社」となると、CEOが「この世界のどこかにいる他の人でも出来ること」で忙しくしていても、あまり疑問に思われないんですよね。

日本に数百万ある、ほとんどの中小企業は、そもそもやってることに第三者を引きつける魅力がないので、「特定の分野で日本一・世界一スゴい人を連れてくる」といったことは、なかなか難しいですし、仮にそういう人が見つかって興味を示してくれたとしても、報酬などの条件も合わないことがほとんどではないかと思います。

これに対して「スタートアップ」は、世の中や特定の産業を変える「すごいこと」を考え、「仮に本当にそれが成功したら、その会社が持つであろう価値(数百億円か、数千億円か、数兆円か)」を理解してもらい、会社が持つその価値の一部を投資家や役職員に譲り渡す(つまり株式による資金調達やストックオプションの発行をする)ことで、その「将来の成功した姿」のパワーの一部を、未来から前借りで持って来られる仕組みなわけです。
シリコンバレーをはじめとする世界のスタートアップは、そういう強烈なパワーを利用して急成長しており、日本でも(10年前くらいまでは、そんなことは夢のまた夢でしたが)今や、スタートアップが10億円、100億円を調達しても、あまり話題にもなりません。

せっかく日本でも「タイムマシン」が使えるようになって、経済の法則が全く様変わりしているのに、昭和と同じ経営のノリで、CEOが細々した現場仕事をやっていたり、将来成功した際に安定した競争構造にするにはどうしたらいいか、といったことを考えないのは、大変もったいないなあと思います。

歴女ではないので、そんなに家康に詳しいわけでもなく、史実と異なる点がありましたら、ご容赦ください。<(_ _)>

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では、以下、本題の2021年6月に上場した会社の資本政策です。

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今週は、

ステムセル研究所
コンフィデンス
オムニ・プラス・システム・リミテッド
Waqoo
BlueMeme
プラスアルファ・コンサルティング

の6社を見てみます。

ご興味がありましたら、下記のリンクからご覧ください。

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