週刊isologue(第80号)ヤフーのデータセンター(沿革とスキーム編)

先週末10月8日に、「Yahoo! JAPAN、福島県白河市に環境対応型の大規模データセンター建設を決定」、というプレスリリースが出てました。

日本経済新聞の同日の記事によると、

ヤフー、福島県に大型データセンター 「クラウド」拠点に
ヤフーは福島県白河市に大型のデータセンターを建設する。2012年3月の完成を目指す。数万台規模のサーバーを格納し、ネット経由でソフトやシステムを提供する「クラウドコンピューティング」事業を強化する。(中略)第1期の投資額は数十億円規模で来年春の着工を目指す。サーバーを格納する「ラック」と呼ばれる専用棚を1棟で約600台収納できる。6棟・3600ラックまで拡張すれば国内最大級になる。(以下略)

とのことであります。

ヤフーのデータセンターと言えば、今年6月30日に、

ソフトバンクIDC ソリューションズ株式会社合併に関する 更正・決定通知書の受領について(pdf)

というプレスリリースが出ており、東京国税局から、データセンター事業会社の合併に関して、国税(附帯税を含む)、地方税(延滞金を含む)合せて約265 億円の追徴税額の発生を見込んでいる旨が書かれています。

同プレスリリースによると東京国税局は「本合併等を事業上の必要性から積極的に進めたものとは認められない」等と指摘し、ヤフーはこれに猛反発しています。

 

こうした税務上のトラブルがあるという予備知識の下で上記の福島のデータセンター建設のリリースを読むと、東京国税局側の考え方をする人は、

事業上の必要性をアピールするために無理して追加投資してるんじゃないか?

と疑うかも知れませんし、ヤフーにシンパシーを感じる人は、

上記の日本最大級のデータセンターなんてものを無理して作るなんてことは無いでしょ?
「税務署のおっさん達は「クラウド」ビジネスの将来性を理解してないんじゃないの?
こんな曖昧な基準で更正決定されては、他の会社や経済全体にも萎縮効果が出てしまうのでは…

といったことを考えるかも知れません。

 

当然ですが、ヤフーや東京国税局などの方々と異なり具体的で詳細な資料に当たれるわけではありませんが、今回は、開示情報や報道等から分かる範囲で、この取引の全貌を考えてみたいと思います。

今週はまず、この合併対象となった「ソフトバンクIDC ソリューションズ株式会社」という会社の波瀾万丈な「一生」と、行われた組織再編のスキームの全体像を考え、次週、経済的・税務的にそれらをどのように考えることができるのか、について考えます。

ご興味がありましたら、下記のリンクからご覧いただければ幸いです。 

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