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フェムトパートナーズ メンバーインタビュー① 曽我悠平 フェムトの挑戦 ー 運用成績日本首位のその先へ


フェムト参画までのキャリア

磯崎(聞き手) いつも一緒に仕事してるので、超「あらためまして」にはなりますが(笑)、ではまず、曽我さんの今までの経歴をお願いします。

曽我 2002年新卒で新生銀行に入りまして、最初、本店営業7部に配属されました。そこで 通信・メディア業界の担当をしていまして、NTTとかKDDI、電通、博報堂、テレビ会社各局、メディア関連がお取引先でした。

しかし、銀行は大企業向けにはもうやることが限られていて、普通に貸出ししてもスプレッドが取れないので、 やるんだったらM&Aとか、持ってる不良資産の売却とか、そういった(利益率の高い)ことを仕掛けろというのが部長の方針でした。

私は電話の掛け方も知らない新人で、何をしていいかもわからなかったのですが、新規開拓をしろということになりました。その当時、各部門の机も日本企業風の「島」ではなく、パーテーションで1人1人区切られていまして。

磯崎 「外資」っぽい感じのオフィスだったってことですか?

曽我 はい、当時の新生銀行は「外資」で、机もパーテーションで区切られていたので、そこで昼寝し放題だったんですね(笑)。

そうしたら、前の席に座っていた次長が、おもむろに立ち上がって、会社四季報をめくって、「お前ここ電話しろ」と。

「わかりました」「わかりました、じゃなくて、今だ。今この瞬間に、俺の目の前で電話しろ」と、 電話をかけさせられて、「新生銀行の曽我ですけど。管理部長かCFOいませんか?」と、電話をかけることになりました。それで アポが取れたら、「じゃあ、とりあえず行ってこい」と。「何を話すんですか?」「それも考えろ」てな感じで。

最初に行った会社が、IT系の上場企業だったのですが、いきなり銀行の取引先でもないCFOのところに行って、別にネタもないのに話をして帰ってきて。

「お前どうだった」「いや、何も話すことなかったですけど、30分話しました」「ネタがないのに30分話したら大したもんだよ、その調子で新規開拓するように」という感じで、担当業界の新興企業、当時のライブドアとかインデックスとか、ネットイヤーグループやネットエイジ(現ユナイテッド)などの未上場企業に行ってました

磯崎 新生銀行って、そうした有望ベンチャーみたいなところとは既に取引があったのかと思ったら、まだまだ開拓の余地があったってことですね?

曽我 今と全く違って、日本全体どこの銀行もスタートアップに融資するなんて時代では全くなかったので、新興企業なんか全然取引してなかったです。今をときめく上場テック系企業の融資の依頼も当時は断ってましたし、すでに上場していた某大手通信キャリアですら「そんなところに融資できたらお前は天才だ」って当時の役員に言われたくらいです。

磯崎 なるほど。ゆっくりとはいえ、20年で少しは日本もスタートアップに対して、いい環境になってきているわけですね。

曽我 はい。その後2004年に、将来の社長含みで副会長で入ってきた元モルガン・スタンレー東京支店長のティエリー・ポルテ氏が、「新生銀行でもう一度ベンチャー投資をやろう」と、言い出しました。

新生銀行の前身の日本長期信用銀行は昔、NED(日本エンタープライズデベロップメント)という、日本でほぼ最初のVCがグループにいたわけですが、それを安田企業投資(損害保険ジャパン日本興亜と明治安田生命が出資)に譲渡してしまって以降、ベンチャー投資はしていませんでした。

例外的に株式で投資をする場合には、個別に取締役会に付議していたので、意思決定も遅かった。そこを、もうちょっと柔軟にスピード感もって対応できるようなプログラムを作ろうぜ、ということになり、その当時の営業7部の部長や次長さんに加え、「お前は新規開拓の動きもいいから、じゃあ一番ペーペーで働け」ということで私がそのチームにアサインされまして、それが2004年7月に立ち上がった「プレIPO投資チーム」という組織でした。

プレIPOだから上場直前に投資をして、上場したら売却するというスタイルです。で、最初いくらか予算をもらって投資をしたら、これが結構儲かってですね。

磯崎 (企業名とキャピタルゲインの額を聞いて)すごい!

曽我 で、これは儲かるなということになったのですが、その後リーマンショックで2008年9月から「新規投資はやめろ」ということになり、それまで土日も休みなく深夜まで毎日働いて、朝も8時に出社するみたいなことをやってたのに、急にヒマになってしまいました。

そこで、一旦新生銀行を辞めて、そのプレIPOチームの部長が作った、ベンチャー投資をする会社を手伝うことにしました。

磯崎 いったん、銀行と全く違う会社に転職したわけですね。

曽我 はい。それで2012年、新生銀行の経営陣の変更があって、 第一勧銀出身の方が社長、専務になり、 その新しい経営陣の新基軸で、「ベンチャーで何かできないか」ということで、その検討委員会のメンバーに磯崎さんにも来てもらっていて。

磯崎 そうでしたそうでした。新生銀行の役員の方々だけでなく、中央官庁の方や東大の教授など、そうそうたるメンバーの委員会の中に、なぜか私も呼んでいただいて。

曽我 で、スタートアップ向けに、 今で言うベンチャー・デット(貸付)みたいなことをやろう、一部エクイティ(株式投資)もやりますよっていうことになり、そのエクイティ投資のメンバーとして私がまた呼び戻されました。

そして、そこのチームで半年ぐらいした2012年10月くらいに、磯崎さんと新生銀行が、ファンド(フェムト1号ファンド)を作る構想が本格化してきたので、改めて呼び出され、その2ヶ月後に、そのプライベートエクイティ部のフェムト担当になりました。

磯崎 一度退職した行員をまた呼び戻す銀行というのも、日本ではかなり珍しいですよね。私は2012年1月から、フェムト・スタートアップLLPという投資の組合を既に作っていたところ、前述の委員会のご縁から、ある日、新生銀行の方が訪ねてこられて、ありがたいことに、あれよあれよという間にファンド設立の話が具体化していったんですよね。

フェムトでの今の役割は「COO」

曽我 そこから、2013年4月にフェムトグロースキャピタル投資事業有限責任組合(フェムト1号ファンド)ができました。

磯崎さんという「個人」と、銀行が組んでファンドを作るというのは前代未聞で、それまでは誰も想像もできなかった。やってみたら、ファンドサイズは小さめでしたが、日本で1位(2024年Preqin調査)となるリターンを出せたので、大正解だったわけですが。個人としても、日経新聞より「ホームラン王」のタイトルを貰いました。

磯崎 大変ありがたいことで、他の日本の銀行でも、多分なかった試みですよね。

曽我 はい、日本初だと思います。私はそれまでずっと上場前のレイター投資で30社ぐらい投資して、10社ぐらいIPOして、成績は良かったと思うんですが、シードやアーリーステージは新しいチャレンジでした。

10年フェムトでやってきて、累計20社ぐらい投資をして、2社IPOという結果でしたので、Exit社数の「率」や「数」としてはレイター投資の方がいいんですけど、リターンの「金額」的には、私個人のポートフォリオの中では、半々くらいで、これは誇らしいことだなと思います。

そして、次に2号ファンドを作るタイミングで、私は新生を退職してフェムトに移籍し、磯崎さんとフェムトパートナーズ株式会社を設立することになりました。

磯崎 はい。ありがとうございました。そういえばこれ、今までそんなに深く聞いたことなかったかも知れないですけど、それ、新生さんは、よく許してくれましたよね?

曽我 はい。当時の上司の個人としての配慮だったのかビジネス判断だったのかよくわかりませんが、何回か聞きましたけど、「お前のためには新生辞めてフェムトに行った方がいいよ」っていうことは言っていただきました。
私は普通にやってたら新生企業投資の社長になるもんだと思ってたんですが(笑)そこでフェムトに転籍をさせてもらったというのが、人生の大きな転機でした。

磯崎 フェムト参画後はゼネラルパートナーとして活躍して今に至ることになるわけですが、では次はそのフェムトにおける現在の業務について教えてください。

曽我 2号ファンドの最初はメンバーは磯崎さんと私だけだったので、現場担当者という形で全般に関わって、ソーシング(投資先候補のスタートアップの発掘)から定例会への出席から、すべてやってきています。で、3号ファンドになる前には山田さんをはじめメンバーも増えてきたので、今では「COO」(Chief operating officer)的なことをやっている感じです。

磯崎 そう、他の人に支えられながらも、最初は2人でやっていたんですよね。

経歴、ありがとうございました。次に、「自身の強み」は、どのへんだと考えてますか?

自身の強みとフェムトの魅力・課題

曽我 強みとしては、関係者の間のバランスを取って、うまいところに落としどころを見つけられるよう調整するというのは得意かなと思ってます。

私、大学院の時、国際法専攻で、修士論文が、出来たばかりの国際刑事裁判所についてだったんですけど。指導教授が「国際法はInternational Lawって英語で言うけど、いわばCoordination Lawで、主権を持った国家同士の利害関係を、あっちを立て、こっちを立てつつ、うまい感じでバランスをとって落ち着かせて、戦争にならないようにする、調整する法律なんだ」と。「これからの時代、そうした利害関係者同士のバランスを取ってうまいところに落ち着かせるのは社会でも使えるかもよ」みたいなこと言ってたんですけど。別に国際法で学んだわけではなく、もともとの私のパーソナリティーかもですが。

もう一つ、好奇心の強さというのもあるかと思います。スタートアップ全般に対して、この新しいサービスがまず面白いなっていうところと、それをどういう風に世の中に役に立っていくのかっていうのがすごく好きというのが、この業界で、長く続いていた1つの原動力かなと思ってます。

磯崎 ベンチャーキャピタリストの原動力は好奇心以外ないんじゃないかなと思いますね。

キャピタリスト業務というものの魅力、醍醐味については、どう感じてますか?

曽我 そうですね。繰り返しですけど、今まで世の中にないような新しいサービスにも一旦触れられるっていうところと、 で、自分ではおよそ想像もできないような新しい発想をする天才や起業家たちと身近にいさせてもらえる、間近で見させてもらえるっていうのは、すごく刺激的なことだと思います。

磯崎 まさにそこ、ですよね。ではフェムトという組織の良さは、どこにあると思いますか?

曽我 結構リベラルで、その人の自主性に任せてるっていうところですね。これは、やりやすい人にとっては、 すごく働きやすい職場だと思うし、やりたいことはなんでもできるけど、主体性のない人には逆に辛い環境かもしれない。

もちろん、入社して初日から全くの放任というわけではなく、最初の半年くらいはベンチャーキャピタリスト業務やフェムト自身の仕組みについて、いろいろアドバイスや指導もします。が、キャピタリストっていうのは結局、それぞれ自分のスタイルがあるものであり、自分で一番いいと思うスタイルでやればいいのかなと思います。

磯崎 確かに、何もないところに道を作るのが仕事のスタートアップの、その手伝いをするのがベンチャーキャピタリストなので、ただ教えてもらうのを待ってるような人は向かないのかもしれません。

が、フェムトは投資先の社数を絞っている分、1人がいろんな会社に関われるし、新たなスキームや制度対応などにも積極的にチャレンジしているので、興味がある人にはものすごく面白い職場じゃないかと思ってます。

では次に、フェムトの課題というか、今後やっていくべきことはどうお考えですか。

曽我 「ダイバーシティ」は課題としてあるかもしれないです。

今のフェムトは、バックグラウンド的に金融や会計っぽい人が多めなので、違ったバックグラウンドの人ももう少し増えた方が、会社としての幅ができていいんじゃないかなって思います。

磯崎 ですよね。日本のスタートアップにフォーカスしてるにしては、帰国子女や留学経験者も複数いて、そうでない人も全員毎週英語のトレーニング受けたり、グローバルなマインドを持とうとしてますけど、もっとテクノロジーとか実際に事業会社を成長させた経験がある人などもいていいですよね。

では、「今後の抱負」はいかがですか?

曽我 会社としては、やはり永続させていくっていうのは1つ。人も増えてきたので、中長期的に勝って、残っていけるフェムトにしていきたいっていうのが、抱負としてはあります。

キャピタリストとしては、もっと大きいIPOを出したい。デカコーン(企業価値100億ドル/1兆円)級のIPOになるような会社と巡り合えるような投資活動をしていければと思います。個人としても、フェムトのチームとしても、そういうスタートアップをサポートしていけるようにトライしていきたいなと思います。

磯崎 シリコンバレーのトップクラスのVCには、「あのVCが投資してるから、きっとすごいスタートアップなんだろうな」というみんなの期待が働いて、実際にすごいスタートアップになるという「予言の自己成就」の力が働いていると思いますし、VCとしてその高みにまで達しないと、いい会社に出会い、そこにいい人が集まり、いいお金が集まり、巨大企業にまで成長するというサポートにはなかなかならない気がします。

日本では「VCはどうせ売るやつらだから、あいつらが株をまだ持ってるってことは、後で売りが出て株が下がるんだろうな」って思われちゃう面がまだまだありますが、米国では逆に「アーリー期から会社をよく知っているあのVCが上場してもまだ株を持ってるということは、あの会社はもっと成長するんだろうな」と思ってもらえることも多いかと思います。

プロの機関投資家さんに「フェムトってそこそこすごいよね」って思ってもらうのは、もう少しがんばれば達成できるかなって気がするんですけど、一般の個人投資家の方々にまで「フェムトが投資した会社だからすげえ会社なんだろうな」と思ってもらえるようになるところまでいくのは、かなり時間がかかりそうですね。

曽我 ということは、やはり、そうした機関投資家が中心で株を持ってくれるような、数百億円以上の大型のIPOをどんどん出すのが近道ですね。

磯崎 はい。では最後に、フェムトの求める人材像についてはどう考えてますか?

求める人物像は「野望がある人」

曽我 自主性があって、自分で動けて、面白い仕事を自分で見つけて、活躍できる人、大きい産業を作れる会社を見つけたいという野望がある人に入ってきてもらいたいなと思います。

「こういう教育プログラムがあるから心配せずに飛び込んできてもらいたい」と言いたいところですが、ベンチャー投資の場合、実際難しいですよね。

最先端の領域ですから、「自分がうまくいったので、おまえもそれと同じやり方をやれ」と人に押し付けるっていうのが本当にいいのか、という。

磯崎 私も「『起業のファイナンス』のここの部分、これどういうことです か?」とか聞かれたら、いくらでもしゃべりますよ(笑)。しゃべりたくてしょうがないのに実際、中にいるメンバーには、さほど聞いてもらえませんけど(笑)

でも、そうしたベンチャーキャピタリストとしての核となる考え方やテクニックは、日頃使っている投資委員会での検討資料や契約書などの中にも落とし込まれているし、実際の投資で、そうしたものに触れて、社内外のslack等の上での細かい質問やコメントに触れながら、身についていっている部分もあるかもしれませんね。

ありがとうございました!


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