週刊isologue(第22号)日本通信(株)の 持株会社を使ったファイナンスとその背景
今週のメルマガ「週刊isologue」は、(twitterでも一部でちょっとだけ盛り上がっていた)、先週8月24日付で発表された日本通信株式会社の「実におもしろい」資金調達スキームとその背景について勉強してみたいと思います。
■事業の概要
日本通信は、大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場する、「MVNE」を戦略の中心に据えている会社です。
MVNOというのは、Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者のことですが、
MVNEというのは、Mobile Virtual Network Enabler、MVNOを行う企業を支援する事業者のことだそうです。
簡単に言うと、ドコモやKDDI、ソフトバンクといった「普通の携帯電話会社」は、電波の基地局などの物理的な通信設備(OSI参照モデルのレイヤー1)を持っているわけですが、これは、ご案内のとおり、ものすごい金がかかる事業なわけです。
携帯電話会社3社の資産を示したのが下のグラフですが、
図表1.携帯電話会社3社の資産内訳
(出所:各社H21年3月期有価証券報告書より作成。単位:百万円)
各社、2兆円から6兆円規模の資産を使用しているわけです。
ところが、MVNOというのは、そうした電波の基地局等の設備は自分では持たず、携帯電話会社の設備を借りて「携帯電話会社」をやってしまおうという事業です。
このため、日本通信の総資産は、今年3月末で、わずか24億円程度。
つまり、携帯電話大手各社の1000分の1規模の投資でできてしまう事業ということになります。
(上記のグラフに表示しようとしても、あまりに小さ過ぎて、表示されません。)
日本通信は、今までは携帯電話会社とレイヤー3(つまり、インターネットと同じプロトコル=IP)でやりとりをしていたのですが、長年の交渉や、総務大臣裁定なども経て、今年の3月17日にはNTTドコモと「レイヤー2相互接続」をしています。
(会社側の発表では「世界初」とあります。)
日本通信、ドコモとのレイヤー2相互接続を完了
http://www.j-com.co.jp/news/release/0904.html
この「レイヤー2」にすると、新しいサービスを作れるフレキシビリティが高まり、また、「帯域幅料金(接続料)において約20%」安くなる、と説明しています。
株価も4倍に跳ね上がりました。
現在の時価総額は190億円程度。(→Yahoo!ファイアンス:日本通信)
一方で、下記のITPROの記事によると、
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080916/314906/
ただし,レイヤー2接続はMVNO側の設備負担が増える。 (略)中継パケット交換機の開発は一般に最低数億円かかると言われ,運用にも高度なスキルが必要となる。日本通信と同じ方法でレイヤー2接続を実現できるのは大手プロバイダなど一部に限られるだろう。
とのことで、数億円程度ですが、ちょっとした資本力が追加で必要になってくるわけです。
(上記記事に掲載されている図は、[パソコンのインターネットの設定程度の基礎知識がある方には] わかりやすくなってます。
つまり、レイヤー3接続では、ユーザはドコモとPPP接続していたのが、レイヤー2だと、日本通信自身とPPP接続して、IPアドレスも日本通信がユーザに割り当てる、ということになるようです。)
・・・ということで、今月の目次とキーワードは以下のような感じです。
MVNO事業は儲かるのか?
興味深い、経営陣のプロフィール
これまでの資本政策流れ(これも、おもしろい)
ベルギーの持株会社「LT SANDA」
BVBA
「エクイティ・ コミットメント・ライン」(ECL)
なぜこのファイナンスを行ったのか?
債権の現物出資
ご興味がありましたら、下記のリンクからご覧いただければ幸いです。
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