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フェムトマガジン

日本や世界のスタートアップについて、ファイナンスの観点から考えるマガジンです。2020年9月までの名称は「週刊isologue」。
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2016年2月の記事一覧

週刊isologue(第360号)日本に「ユニコーン」が現れない理由(わけ)第2回

今回も、日本に「ユニコーン」が現れない理由について、ファイナンスに用いられる株式の種類の観点から考えてみたいと思います。

目次とキーワード

優先株式が使われている場合の企業価値
 普通株式の場合のダウンサイドリスク
 優先株式の場合のダウンサイドリスク
 普通株式の株価のまま優先株式に置き換えるのでは意味がない
シリーズAの投資家が何を考えるか
 普通株式の場合
 参加型(full-part

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週刊isologue(第359号)日本に「ユニコーン」が現れない理由(わけ)第1回

今回は日本に「ユニコーン」が現れない理由について改めて体系的に考えてみたいと思います。

特に米国と日本は、投資家もベンチャーもプレイヤーが全く異なりますし、金額の規模も何十倍何百倍の違いがありますので、「同じ(シンプルな)物理法則」で考えると間違うんじゃないかと思っております。

「日本になぜユニコーンが現れないか」を考えると、日米の非上場投資の構造の違いや、日米で「エンジェル」や「上場マーケッ

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週刊isologue(第358号)Series B以降の増資の条件交渉(その2)

今回も、米法律事務所WSGR(Wilson Sonsini Goodrich & Rosati )のレポートなどから、Series B(2回目)以降の増資時の優先株式の条件について考えてみます。



目次とキーワード

IPO時の保護条項
適格IPO(Qualified IPO)を時価総額で定義するケース
転換価格で調整するケース
Squareの転換価格調整特別条項の問題点
日本でのIPO時の

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週刊isologue(第357号)Series B以降の増資の条件交渉(その1)

今回は、Series B(2回目)以降の増資時の優先株式の条件について考えてみます。

最初の増資は、(人生最初で勝手がわからないということはあるかもしれませんが)、「経営陣(創業者)vs投資家(エンジェルやVC)」なので、まだ比較的シンプルな構図です。ところが、2回目以降の増資となると、既存株主と新規の投資家とのプロ同士の「対戦」ともなりますので、話もややこしさを増してきます。

日本でも「優先

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週刊isologue(第356号)なぜ「残余財産分配権3倍」のベンチャーは、うまくいかないのか?

(今回は、自己啓発本的なタイトルにしてみましたw )

いろいろな会社の相談を受けたり投資の検討をすると、時たま、「投資額の3倍」といった高い倍率の残余財産分配権が設定されている優先株式で資金調達している会社に出くわします。そして、(統計的な処理が行われていないので感覚的な影響を受けている可能性はありますが)、そういった会社は、なぜか、うまくいっていないことが多い気がします。

本日は、なぜそうな

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週刊isologue(第355号)ストックオプションの「適正量」を考える(VC比率編)

今週は、「VCの保有する株式の比率とストックオプションの比率は、何か関係があるか?」ということを考えてみたいと思います。

目次とキーワード

2015年IPO企業の潜在株式割合データ(VC比率編)
仮説
地方企業等(自己ファイナンス型)と、急速グロース型
株主にVCがいる企業、いない企業
リードVCがいるかどうか
VCの比率との関係

ご興味がありましたら、下記のリンクからご覧いただければ幸いで

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週刊isologue(第354号)ストックオプションの「適正量」を考える(データ編)

「ストックオプションって、何%くらいが適正量なんですかね?」という質問をいただくことがよくあります。

引受主幹事証券さんの反応等を踏まえた今までの経験から、「VC比率にもよりますが、また海外のストックオプション・プールはもっと大きいことが多いと思いますが、日本だとだいたい発行済株式に対して10%くらいを、上場に影響を及ぼさない固めの数字として考えておけばいいんじゃないでしょうか?」といったお答え

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週刊isologue(第353号)ついに登場、監査等委員会設置会社のIPO

監査等委員会設置会社は指名委員会等設置会社よりシンプルなのはもちろん、従来の監査役会設置会社よりも、ある意味シンプルな面がありますので、ベンチャーにも十分お勧めできるのではないかと考えています。

「指名委員会等設置会社をもうちょっとライトにしたしくみにニーズがあるのでは?」ということは、私は2007年から言ってました(isologue「委員会設置会社制度改造論」ご参照)ので、昨年の会社法改正でこ

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週刊isologue(第351号)上場前後の資本政策(2015年第4四半期:後編)

今回も、2015年第4四半期にIPOしたベンチャーを中心とする会社の資本政策についてです。

取り上げた企業

あんしん保証
ロゼッタ
ベルシステム24ホールディングス
ネオジャパン
インベスターズクラウド
鎌倉新書
ラクス
ダブルスタンダード
オープンドア
フリュー
アークン
マイネット
ビジョン
ソネット・メディア・ネットワークス
ソーシャルワイヤー

ご興味がありましたら、下記のリンクからお

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週刊isologue(第350号)上場前後の資本政策(2015年第4四半期:前編)

今回は、2015年第4四半期にIPOしたベンチャーを中心とする会社の資本政策についてです。

今年の第4四半期に上場したのは以下の企業です。

本日は、AppBankからゆうちょ銀行までを取り上げます。

(「あんしん保証」以降は、また来週。)



取り上げた企業

AppBank
グリーンペプタイド
GMOメディア
パートナーエージェント
バルニバービ
日本郵政
かんぽ生命保険
ゆうちょ銀

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週刊isologue(第349号)ザッカーバーグの「全財産寄付」

Facebookのザッカーバーグ氏が5兆円以上になる(ほぼ)全財産を寄付することにした、と発表したことについて、「すばらしい」「いや、偽善だ」といった議論が巻き起こりましたが、今回はこの件について、開示資料から考えてみたいと思います。

目次とキーワード

ザッカーバーグ氏のFacebookへの投稿
SECへの開示
 寄付等の期間
 寄付等の方法
 寄付等の量
 寄付等の目的
 実現の手段
 目的

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週刊isologue(第348号)改良版「経営者持分の是正法」

今回はシード期からアーリー期における「経営者持分の是正法」の改良版についてです。

これは拙著「起業のエクイティ・ファイナンス」

第5章「経営者の持分を是正する乙種普通株式」に書いた、劣後株を使ってシード期からアーリー期のベンチャーの経営者の持分を是正する方法を、その後の実務で使ってみて、一部改良するものです。



目次とキーワード

資本構成の是正の必要性とは
ストックオプションで是正を行

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週刊isologue(第347号)改良版「みなし優先株式」

今回はシード投資用「みなし優先株式」の改良版についてです。

これは拙著「起業のエクイティ・ファイナンス」

第4章「優先株式の投資に備える『みなし優先株式』」に書いた、シード投資に用いるシンプルな「みなし優先株式」を、その後の実務で使ってみて、「ここは直したほうがいいな」と思ったところを改良するものです。



目次とキーワード

「みなし優先株式方式」の概要
「みなし優先株式方式」の特長と要

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